【後編・全文書き起こし】大阪桐蔭 西谷監督がラジオで語る|メンバー外の選手の力
ABCラジオ「伊藤史隆のラジオノオト」では、12月6日(木)と12月13日(木)の2回にわたり、大阪桐蔭野球部監督の西谷監督へのインタビューを放送。
今回は後半、大阪桐蔭の寮生活、西谷監督の私生活、そして春夏連覇したチームのその共有点(メンバー外の選手の力)について語られた。
インタビューを全文書き起こしました。濃密です、ご覧下さい。
▶︎<前編>大阪桐蔭・西谷監督がラジオで語ったこと(前編)
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西谷監督インタビュー(後編)
【伊藤】西谷監督は甲子園だけでも春夏で7回優勝されて、この道を選ばれたのはなぜで、いつ頃から高校野球の指導者になりたいと思われたのですか。
【西谷】すごく、いつからというのはないのですけれども、高校生の時には高校野球の監督、指導者になりたいなというのは持っていた記憶はあります。
【伊藤】報徳学園にいらっしゃった。関西大学にいかれまして、大学時代のご自分のプレー、その頃にも指導者というのはずっと頭の中にあったのですか。
【西谷】ありました。ありましたので教職をとって、大学で野球をやりながら、教職をとるのは大変でしたけども、そういう夢があったので、そういう授業に出ていたのだと思います。
【伊藤】そして大阪桐蔭の監督に就任されたのは何歳でしたか。
【西谷】29歳で1回3年間やりまして、前監督が1年間戻られて、また監督に戻るような形になりました。29歳でした、一番最初は。
【伊藤】かなりお若くて
【西谷】もっと細かったですし(笑)、当時は20代で大阪で私学の監督なんていうのは、なかったですね。ですから、PLには中村監督がおられ、そして上宮には山上監督がおられ、大監督がいっぱいおられましたし。20代でといったら、「なんだこの若造」みたいな感じはあったと思いますし。若いと思われたくない、なめられたくないという気持ちを持ってる自体が若いんですけれども、そんな感じでしたね。そこはコーチの延長というか、そんな感じの3年間でした、最初は。
【伊藤】西谷監督は、生駒の山の中腹といいますか、グランドがあって合宿所がありますが、そちらにずっと
【西谷】独身の時はずっと一緒に生活していました。
【伊藤】ご結婚はいつされたんですか。
【西谷】えー2005年ですね。
【伊藤】ということはお歳でいうと、30代の半ば。
【西谷】そうですね、はい。
【伊藤】いつ伺っても西谷監督は合宿所かグラウンドにおられる。
【西谷】あーそうですね。あのー、今も寮から車でしたら5分くらいのところに家がありますので、ほとんど行けるような感じは生徒も持っていると思います。
【伊藤】高校野球の先輩の指導者の方々も「西谷は家に帰っとるんか」と。
【西谷】ちゃんと帰っていますよ(笑)。あのー、普段は練習終わって、一旦家に帰って食事してお風呂はいって、ぱっと済ませて寮にきて、皆んな寝て、帰るような感じですし。朝、練習してる子がおったら見るときも、見れないときもあるんですけど、ですから生徒からすれば、ずっと居てるような感じに思って。夫婦仲が悪いと思われているかもれませんが、家には毎日帰って、家で毎日寝てます、はい(笑)。
【伊藤】奥様はそういったご主人の活動・行動については、どうおっしゃっているんですか。
【西谷】んー、それはもう理解してくれていると思いますんでね、子供もいますので大変だと思うのですけど。よくやってもらっていると思います、はい。
【伊藤】立ち入ったことを伺いますが、お子様は。
【西谷】6年生と3年生の女の子です、両方。
【伊藤】女子野球をやっている?
【西谷】えー、いえいえやっていません。はい(笑)。
【伊藤】ご自分の空いている時間も生徒のちょっとした動きを見てらっしゃるという西谷監督ですけれども、こんな時代に、16歳から18歳という多感な年齢のトップアスリートを預かって育てる。これはやりがいもおありでしょうけど、ものすごく難しいことだと思うのですが。
【西谷】そうですね、はい。野球のグラウンドだけでなく、学校もありますし、練習がおわりました、じゃあ解散!の学校ではないので、またそのあと皆んなで寮生活もありますので。大げさに言うと皆んなで24時間、時間を共有していますので、今そのやり方が大阪桐蔭の野球部のやり方で。もちろん練習終わって家に帰って、通いでやられている学校がダメというのではなくて、うちは今そういうやり方をしていますので、その中で学ぶことというのは、家では学べないことがたくさんあると思います。
【伊藤】生徒さんたちはそれぞれお部屋は何人部屋なんですか。
【西谷】3人で1部屋が基本ですね。同級生同士です。3年生は3年生、2年生は2年生、1年生は1年生の基本3人部屋で、だいたい1学年が20人くらいなので、7部屋くらいで3×7=21くらいの感じです。
【伊藤】食事は寮で
【西谷】食事は作っていただいて、食事当番が1週間に1回くらいありまして、給食当番みたいな形で、配膳から皿洗いまで、ちょっとその日は皆んな大変なんですけど、それも3年生、2年生、1年生、皆んな3年生3人、2年生3人、1年生3人みたいな感じで、学年で1組ずつ出てくるような感じなので、基本は寮のことは自分は自分でやるということでやっています。
【伊藤】監督が中学生、高校生のころ、いまだからいえることじゃないですけど、スパルタな時代で、スピリットとしていい部分と、しっかり変えていく部分というのは、おそらくすごく意識してやっていらっしゃると思うのですが、その指導の中で心がけてらっしゃることというのはどうなんですか。
【西谷】今は非常に仲がいいですよ、先輩・後輩というか。昔みたいなピリピリしたみたいなのはそんなにないですね。ただその中で礼儀とか、そういうことはきっちりさせたいとおもっているのですが、非常にこう3年生、2年生、1年生それぞれの学年で、尊重しあってやっているのはいいなと思っています。やはり大阪桐蔭を目指して、私の元にというのはおこがましいですけれども、来てくれた子供達なので、なんとか3年間、他の学校よりも鍛えて次のステージに持っていきたいなというのは毎日考えています。
【伊藤】それこそ多感な年代の少年たちですので、プレーもそうですし、私生活でちょっと逸れかかるような、心折れかかるような瞬間ってたぶんあると思うのですけど、どんなことを見て、どんな風におっしゃっているもんなんですか。
【西谷】彼らにとって一番大事なのは、やっぱり野球なので、例えば一番わかりやすい例は、メンバー発表の日ですね。メンバー発表して、やはり背番号をもらいたい、一桁の背番号をもらいたいということですけれども、この3人部屋というのが非常に微妙で、3人とも全員が入るパターンもあれば、3人全員が外れるパターンもあれば、2人入って1人外れるパターンもあれば、1人入って2人外れるパターンもあると思うんですよね。
その中で自分がどう立ち振る舞うか、どう行動するかっていうことは、これも社会に非常に残酷ですけれども、やはり外れたから下を向いているような子では、皆んなの世界の中で認められないし、逆に入ったからといって有頂天になっている子では、本当のレギュラーにはなれないし。やっぱり自分をこう、なんというんでしょう、殺さないといけないこともあるし、人を立てないといけないところもあるし、自分を貫かなければいけないときもあるし。
そこは3人の生活の中で、グラウンドではなく寮に帰って、隣で背番号をもってるのを見たら、「くそー」と思うんでしょうけど、でもそこでやっぱり一人でバットを振りに行く時間があったり、それぞれやっぱり、皆んなで生活をしているので、難しいところはありますけれども、でも非常に勉強じゃないかなとは思います。
【伊藤】今年でいうと春夏連覇、これは素晴らしい偉業ですけれども、ということは18人のメンバーですから、60部員がいらっしゃった場合は3分の2ほどは、ちょっとこう悔しい思いをしている。そんな生徒さんたちへの目配り・気配りも非常にしっかり大事に考えてらっしゃるということですね。
【西谷】もちろんそうですね、はい。この間ずっと、たまたま考えたんですけど、春夏連覇というのが2012年。今年の2018年と、何か共通点はあるかなという風に考えた時に、もちろんいいピッチャーがいるとか、いいバッターがいるということはもちろんなんですけれども。
メンバー外の力というか、メンバーを外れている者がどれだけチームに参加できるというよりも、メンバー外がどれだけチームに絡んでいるかというのを考えたら、2012年も2018年もメンバーを外れている者の力がレギュラーにうまく作用して、チームがいい方向に行ったのだなぁということを自分で気づいて、そうだなぁということを思いましたね。
普段は思っていなかったのですけれども、外れている子たちが次の試合の偵察に行ってくれたり、バッティングピッチャー行ってくれたり。3年生になって試合のメンバーから外れて、相手の偵察に行くって言ったら、僕らもなんというんでしょう、ちょっと言いにくいというか、1・2年生に「あの試合見に行ってきてくれ」というのは簡単なんですけど、3年生からやっぱりこちらからはちょっと言いにくいんですよね。
例えば、中学までの友達が試合に出ていて、自分は偵察に行っていると。ちょっとかわいそうかなというのがどっかにあるので、だからどうしても1年生・2年生に、まあ2年生に頼むんですけれども、そんな時に3年生から「僕、ちょっと偵察いきましょうか」とか言ってもらったら、絶対3年生のほうが経験があるので見る目もあるんですよね。「ちょっと頼むぞ、行ってくてくれ」ってことになって。
そのビデオを3年生が撮ってきてくれたんだということになると、メンバーはやっぱりいい加減に見れないですよね。「あ、あいつが撮ってきてくれたんだ」とか、「お、癖みつけたぞ」とか言ってもらったら、「この時はストレートでこんな時は変化球で」とかいったら「おお、お前すごいな」みたいな感じで。それを1年生・2年生にはできなことを3年生がやってくれて。
どうしても人数的に左ピッチャーが少ないので、左に当たった時というもの、今回左で外れているピッチャーがいたのですけども、本当に甲子園の試合の前のところまでね、入って、室内練習場でバンバン投げてくれて。で、試合に入ったら、「あいつ、あれだけ投げてくれたから今日打とうぜ」みたいな感じで。で、試合が終わったら「おかげで勝ったよ」みたいな感じで。だからすごくメンバー外の者がどんどんどんどんチームに、なんか溝ができる学年というのはなかなか難しいんですけれども。そこはやっぱりキャプテンとか副キャプテンとかが上手くやってくれたんだと思うんですけれども。
この間、ふと、そんなことを考えたことがあったもので。だから皆んなで、全員で、「全員野球」という言葉は簡単ですけれど。とくにうちの場合は皆んなで生活しているので、それがやっぱりできなかった時っていうのは、チームは作用しないなと思いました。
【伊藤】私もプロデューサーも結構な歳になってきましたので、例えば、会社の若者にちょっとものを言ったりする時に、「こんなこと言って大丈夫かなとか、心折れへんかなとか、でもやっぱり厳しく言わないとな」という瞬間などいくつもあるのですけど、監督その辺はどう思ってやっていらっしゃったんですか。
【西谷】ありますね。直接言う時もりますし、ノートにずら〜と書く時もあります。
【伊藤】交換でノートを書いていらっしゃる。
【西谷】書いて、言葉のほうが伝わることがありますので、ちょっと今日見ていてこう思ったということを、ずーっと文字でいっぱい書く時はあります。でもそれを読めば、また喋って伝えるのとはまた違う伝わり方がするときもあるので、どっちがいいなかと思う時はある、そんな感じですかね。
【伊藤】これは違うぞ、これはいけないぞということは、しっかり本人には
【西谷】もちろんそうです。できる限り、その場で言った方がいいと思うときにはその場で言いますし、ゆっくり寮で話をしたほうがいいと思う時もあれば、ノートに書いた方がいいと思う時もとか。法則はないのですけど、その場で勘じゃないですけど、あ、これがいいんじゃないかと思った方法でやっています。
【伊藤】こんな監督と一緒に野球がやれる生徒さん、幸せですね。
【西谷】いえいえ、とんでもないです。
【伊藤】新チームが秋から、冬・春へ。ちょっと微妙な感じで、春へ行きそうなんですよね。
【西谷】そうですね、あと1つね、勝てば。ね、ちょっと安心できるところだったのですけども、ミスも出まして、まだまだ鍛えないといけないということで、今、春目指して鍛えているところです。
【伊藤】本当に長い時間、ありがとうございました。ぜひお体に気をつけていただいて、いい野球を、そしてまたいい生徒さんをたくさん育てていただきますように、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【西谷】ありがとうございました。
(ここまで)
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インタビュー後のこぼれ話
【伊藤】西谷監督ご自身が、高校野球のスタープレイヤーだったかというと全然そうではなくて、報徳学園から関西大学、どちらかというとバックアップするような選手で。そこから指導者を志してきて、あれだけのチームをつくっておられる。そこへの目配りというのは、厳しさというのはもちろんおありなんだけれども、そこへの目配りがチームの強さのまさに秘訣なんだなというのが、私も直接学校でお話を伺ってすごく思いまして。
その前後の雑談ではないですけれども、西谷監督、学校があって練習があって、ご自宅は合宿所から5分なわけですよ。「ご趣味ってないんですか?」って聞いたら、「う〜ん」って考えて、「野球以外ないですね」と。「お酒なんてどうなんですか?」って行ったら、「お付き合いで外に行った時はそれなりに飲みますけど、家で晩酌することは一切ないです」と。
【小林】毎日、そういう強豪校の監督さんって、たしなんでいそうな感じがするんですけど、そうなんですね。
【伊藤】「立派なお体ですけど、お酒飲んで、たくさんご飯食べるんですか?」というと、「いえいえ、ご飯もそんなに食べないですよ」って。で、ここからが凄くて、「もしも寮生活している生徒たちがちょっと体調崩した時にすぐに行ってやりたいし、一緒に病院に行ってあげなきゃいけないこともあるので、それもあって家ではお酒は飲まないっていうのもあるんですけどね」って。
▶︎<前編>大阪桐蔭・西谷監督がラジオで語ったこと(前編)
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ABCラジオ「伊藤史隆のラジオノオト」
12月12日(木) 18:00-21:00放送
パーソナリティ 伊藤史隆
パートナー 小林祐梨子
http://radiko.jp/#!/ts/ABC/20181213180000
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